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スタローンに生で会う(3) 筆:工房の主人 |
柵に上る俺。 あわてて止める警備員。 後ろを外国人が通り過ぎたのか、声が聞こえた。 「Sylvester Stallone's here.(スタローンが来てるみたいだぜ)」 連れの人間に教えてるみたい。 って、興味ない人間はここから去れ!!!! デジカメをドタバタと取り出す。 電源を入れる。 片手を上にのばして、いそうな方向に向けてシャッターを押す。 家を出てくる時、一瞬かすめた嫌な予感が的中。 バッテリー切れ。 電源が落ちる。 ジャンプする。 見えない。 人々の背中の向こうに、チラ、と青いジャケットが見える。 さっきから俺の隣で同じようにうろちょろしている帽子の男に話しかける。 「あの青いジャケットがそうですかね?」 「じゃないですかね」 彼も気が気じゃない様子。 なんだかうれしくなる。 日頃、『ロッキー』のことを声高に話す機会なんて、ない。 でもここには、俺と同じ、ファンばかりいる。 みんな、興奮している。 青いジャケット。 青いジャケット。 見えた! あれか!あれか!?あれなのか?? 顔が見える。 通訳の戸田奈津子じゃねえかー!! 紛らわしい服着るんじゃねー!! 戸田奈津子は戸田奈津子で、単品でどこか別の場所で会ってたら、「本物の戸田奈津子に会う」なんて記事も書きそうなものだが、申し訳ないがこの状況では「邪魔!!」にしかならない。 スタローン様は、まったくもって視界に入ってこない。 ふと前の方のデジカメの液晶を見る。 い、い、いる! スタローンが映ってる!! そいつのデジカメの液晶を、後ろから撮影する。 そう、ちょっとだけ時間をおくと、バッテリーを騙して写真が撮れたりする。 一枚、パチリ。 そしてバッテリ切れ画面。 相変わらず会場はごった返し。 でも俺は、なんだかじんわり幸せになってきた。 ここにはスタローンファンばっかなんだ。 みんな同じ気持ちなんだ。 すっと周りを見ると、ほとんどが、男。 しかもおそらく30代以上がほとんど。 うれしくなる。 女性もいる。抱きしめたくなる(変な意味じゃなくて)。 そうか!君も分かるか!みたいな気持ち。 (ただ、よくよく考えると、連れてこられてただけかもしれない) 金髪の女性と子供が見える。 スタローンの妻子みたいだ。 昔はゴシップみたいな記事もよく読んでたけど、今はよく知らない。 でもまあ、いつもお世話になってます、って視線を送る。 スタローンに動きがあった。 なんと、レッドカーペットを移動するようだ。 おお! 俺はあわてて走る。 「走らないで!」 「押さないで!」 警備員の怒鳴り声があちこちで聞こえる。 バカじゃねえの? ここにいるの、『ロッキー』ファンばかりで、ほとんどが男で、そして会場にはロッキーのテーマが絶えず流れてるんだぜ。 これ、どういう状態か分かってんの? と思いつつ、スタローンのイベントを台無しにしたら大変なので、ちょっとだけ遠慮して‥ やっぱり走る! そして。
ド、 という感じで音が戻った。 スタローン!スタローン!って声がこだまする。 一瞬ためらって、そして俺も叫ぶ。 「スタローン!!」 しかし考えてみると、いきなり名字で呼び捨てなのはいかがなものか。 日本人の役者に向かっていきなり、「妻夫木ー!」とか「真田ー!」とか言うと変だわな。 やはり「さん付け」で呼ぶべきなのか。 Mr.スタローン、ってのがいいの? 下の名前で呼ぶべきなの? そう思って聞いてみると、遠くから女性が「いつもあなたのことを愛してるわー!」みたいなことを英語で叫んでた。 あれが正しい”海外スターへの叫び声の見本”なのかもしれないな、と素直に感心。 やがて、スタローンがしっかり立っているのが見える位置を確保。 そこへ、花束を持った黒木メイサが登場。 スタローンと並んだ姿に、カメラのフラッシュがバチバチとたかれる。 すると、スタローンがカメラの写りのいい場所に彼女を誘導。 スッと、俺の位置からスタローンが消え、代わりに黒木メイサだけが視界に残った。 俺の後ろにいた男がボソッとつぶやく。 「あの女、どけろよ‥」 若い女優に、おっさん(61歳)が勝った瞬間だった。 スモークと共にスタローンが壇上から消え、俺もレッドカーペットから離れた。 ぽわん、としていた。 (C)冒険活劇飲料様 (C)冒険活劇飲料様 (C)冒険活劇飲料様 駅に向かって歩いていると、後ろから男の二人連れらしい会話が聞こえてきた。 「‥よかったな」 「‥ああ」 そして、片方が口笛でロッキーのテーマを吹き出した。 ふと六本木ヒルズを見上げてみた。 なんだかとても気持ちがあったかかった。 歩きながら助監督:西山に広島弁でメールした。 「見た。泣きそうじゃった。」 それ以上は言葉が続かなかった。 ふらふらになりながら、家に戻った。 教えてくれたぽんた君、ありがとー!! -------------------------------- その後、いろんな人に自慢しまくりました。 |
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