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スタローンに生で会う(2) 筆:工房の主人 |
その時俺は、埼玉にある家の近くの喫茶店で、次の日の仕事の準備をしてました。 と、携帯が震える。 見ると、カルフの音楽をお願いしているぽんた君からのメールです。 『今、六本木ヒルズに来てます。6時から、スタローンが来るみたいです』 ガン と頭を殴られたような衝撃。 は? と思わずぽかんとしちゃう内容。 たまたま映画を見に来て、知ったとのこと。 時計を見る。 ジャスト5時。 俺は、何をしたか。 呆然としてしまった。 動きが、思考が止まってしまった。 いや、なんと言うか。 いつの日か!と夢見たことはありました。 でも、あこがれのハリウッドスターに会う、というのは、あまりにも現実味がない。 それが、今、ここにある。 時間間に合うのかなあ。 家にとぼとぼ歩いて帰りながら、ぼんやり考える。 あと1時間。いや、もう55分。 行って間に合わないんだったら、行っても仕方ないなあ。 ぽんた君の勘違い情報なんじゃないの? かなり情報チェックしてるけど、そんなこと聞いたこともないよ。 胸がドキドキしているわけです。 しかし足は重い。 誰かに背中を押してほしい。 俺を『ロッキー』好きにしてくれた西山に電話します。 留守電。 ぽんた君に電話します。 留守電。 西山にメール打ちます。 すぐに返事。「俺、今茨城にいるから行けない‥」 さあどうする。 行って間に合わなくてがっかりするのと、行かなくて後で後悔するの、どっちがいい? スウッと足が少し早くなりました。 頭にロッキーのテーマが流れる。 駆け出す。 家に戻りデジカメをつかんで、自転車で最寄り駅へ。 そして六本木へ。 六本木駅に着いたのはジャスト6時でした。 JRも地下鉄も、ピッとスイカで通れる! つい数日前から、カードが共通化された。 すばらしい! すべて『ロッキー』のためだったのね! 会場の六本木ヒルズまでダッシュ! 徒歩11分、という文字をちら見しながらダッシュ! おしゃれな大人の街で、走る人は誰もいない。 知るもんか! ヒルズ到着。 6:05 しかし会場が分からない。 掃除の人に聞いて、走る。 レッドカーペットが敷き詰められたそこには、ものすごい数の人が列をなしてました。 「ねえ、誰が来るの?」 そんな声がそこここから聞こえます。 野次馬は消えてくれ!! 壁には、特大の『ロッキー・ザ・ファイナル(いわゆるロッキー6)』のポスター。 声にならない興奮が身体中をかけめぐります。 会場の片隅に、ロッキーの像が置いてありました。 鼻息が荒くなってくる。 レッドカーペットを人ごみに流されながらゆっくり進みます。 前方にカメラマンが大勢陣取っているのを発見。 記者会見のような状態です。 「押さないで下さい!!」 警備員が止める。 おいおい、今のこの俺を止めようってのかい。 殴られても殴られても起き上がる、ネバーギブアップのロッキーのイベントだよ! 止められても殴られても、とりあえず一目でも見たい、と俺は思ったわけです。 この瞬間、ヨン様に群がっていたおばさま軍団と、俺は同化しました。 現場は、柵で仕切られ、前もって来ていたファンとプレスだけが中に入れてもらっている。 なんだよなんだよ。 俺は警備員に促されるがまま、人ごみと一緒に会場から遠ざけられていく‥ いかん!! 俺は逆流を始めました。 先ほどまで流れができていたのに、あっという間にそこは混乱状態。 そう、いつの間にか、そこに彼が来ているようなのです。 阿鼻叫喚! 一瞬即発! 波瀾万丈! 酒池肉林! あ、これは違う。 うそうそ、どこどこ? 焦りばかりが先行し、うろうろするだけの俺。 前が見えない。 いるの?どこ? 声が、聞き覚えのある、くぐもった低い声が聞こえました。 聞き間違えるわけがない。 10数年聞き続けている、スタローンの声です。 頭がカーッとなる。 (続く) |
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