ホーム突撃!映画体験隊広島人、『パールハーバー』を訪ねる

広島人、『パールハーバー』を訪ねる
 〜パールハーバーに想う

旅人:工房の主人


ハワイから帰ったのは土曜日。
その夜はバク睡したものの、次の日、日曜日に早速レンタルビデオ屋に行った。

だいたい、こういう時は往々にして

『貸し出し中』

だったりするものなんだが、今回は無事発見

パールハーバーを訪ねた直後に『パールハーバー』を見る!

という今回の企画。

え?話が違う?

・・何か言いましたか?

ビデオのジャケットを見た瞬間、他のを見たいなー、なんて気が起きたが、ここでぐっと踏ん張り、借りて家に帰った。

そもそも映画というものは、見る前に『○○という気分にひたろう』 という気持ちの準備をするものである。

笑う準備。
切なくなる準備。
怖くなる準備。
泣く準備。


パールハーバーはあまり詳しくは知らなかったが、『アルマゲドン』系だろうな、激しいドンパチと恋愛で泣かそう、ってーんだろうと判断。
じゃあ、とりあえず興奮と感動を期待するとするか。


そして鑑賞。





びっくりした。

 

・・・

 

・・・

 

なぁーんにもなかった。


こんなことは初めてだ。

つまらなすぎて怒るわけでなく(実は後半、早送りしちゃったけど)、途中で眠ってしまうでもなく。
かといって、ほんのカケラもいいと思わなかった。

いや、映画を否定しているんではない。

映像もすばらしかったし、ジェリー・ブラッカイマー作品はそんなに嫌いじゃない(あんまり見てないけど)。
『アルマゲドン』もまあいいし、『ザ・ロック』は大好きだ。

この感情は多分、この映画のテーマにあるんじゃないか、って思う。
この気持ちを探るべく、時間をさかのぼってハワイのパールハーバーを訪れた時のことを書く。


俺らは車でそこに向かった。

パールハーバーが近付いてきて、戦艦ミズーリのさきっちょが見えてきた時、俺はどうも身体がむずかゆいような錯覚にとらわれてしまった。

なんか、堂々と歩くのがはばかられるような、理屈じゃなくて、卑屈になってるんじゃなくて、そうすべきなんじゃないかっていう自分の信念のようなもの。


小さい頃から、広島の平和祈念公園を平気で歩きまわるガイジンが信じられなかった。
ガイジン=アメリカ人
だったから、違う国のひともいっぱいいたと思うけどね。

もう少し遠慮して歩いたらどうなんだ?
って子供ながらに思ってきたから。
ここで笑ったり、ふざけたりできねーだろ、おめーら。
そんな風に心の中で悪態ついて育ったから。

パールハーバーに行く。
それは俺にとって、ガイジンが広島を歩く、その真逆なんじゃないか。



まさか来るとは思ってなかった場所。
来ちまったよ。



最初に潜水艦の実物の展示。

ぱらぱらと、軍服を着たひとが見える。
会社の人たちと一緒なのでそれなりに話を合わせたが、どうもあんまり話したくない。

潜水艦の内部にも入れたのでみんなで入ったが、どうも変な感じ。


これは、「おーすげーな」って思えばいいわけ?
「こんな狭い場所でがんばってたんだなあ」って感じてほしいわけ?
ここで動いてた人たちに対して、何をどう感想を持てばいいわけ?






潜水艦の上。
ここから、兵隊さんたちは何を見て何を思ってたの?


貿易に制限をかけたから、とか戦争を止めるためだった、とか。
それぞれの国のお上の言い分に興味は、ない。

だって俺、一般市民だから。
”地面”から見た意見を書きたい。

何度も足を運んできた、広島の平和祈念公園と比べて思うこと。
それは、



んー、違うんだよなあ。




ってこと。

その辺の迷彩服を来たひとつかまえて「広島の原爆資料館に行ってみなよ」って言いたくなって、でもグッとそこでつまった。
まさかこちらの皆さん、原爆資料館を見て、

さすが俺たち。これだけの威力を持ってたんだなあ。

なんて考えたりしないでしょうねえ・・
だって、敷地内にある資料館、

出口にどかーんと巨大なミサイルの実物を飾ってるんですもの。


違うんじゃないの?




専用のバスで移動。
やがて、巨大な戦艦ミズーリに近付いていく。







はぁ〜かっこいいですねえ。






ほぉ〜すごいですねえ。






へぇ〜おっきいですねえ。



『戦場のピアニスト』を見た時は、ドイツ軍に敵意を覚えたものだけど。
ドイツのひとがあれを見たら、複雑なのかもしれないけど、俺にとっては遠い国の出来事。

でも映画『パールハーバー』は違った。

この作品にちっとも感動を覚えなかったのは、意識がどうしても戦争そのもののことに飛んでしまうから、だろうと思う。


どんなに主人公達が哀しい運命にあろうと、

どこの国の人間だってそうだよ、バーロー。

どんなに戦争で悲惨な状況になろうと、

あんたんとこだけじゃないよ、バーロー。



どーしても、冷めちゃう自分がいる。
もちろん戦後生まれの俺は、戦争そのものの影響なんて受けてないし、一般的な年の近い日本人と同じくのうのうと生きてきた。
でもなんだろ、怒りとかじゃない。

戦争のこと考えると、空しさでいっぱいになる。

広島で教育を受けた、『刷り込み』なのか。





戦艦ミズーリの上にいる時、ふと思い立ってみんなと反対方向を向いてみた。



これは、戦艦ミズーリの甲板から見える町の景色だ。



ほら、平和じゃない。
すんごくのどかじゃない。

 


こっちの方がずっと自慢できると思うんだけどなあ・・・。




(おしまい)


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