ハワイに行くことになってしまった。
会社の社員旅行である。
このご時世に豪勢な話ではある。
しかし、半分は自腹なのだ。強制的に。
ハタハタ迷惑な話でもある。
しかも、知る人ぞ知るが、俺はとんでもなく飛行機恐怖症である。
どんなに寝不足でも、飛んでる間は一睡もできない。
足の下に何もないと考えるだけで、汗がだっらだら流れ続ける。
広島に帰省する時も、1時間の飛行機より7時間の新幹線他の旅を選ぶ。
ずうっと飛行機を避けて生活してきたが、ここに来て捕まってしまうとは。
しかし、ハワイ。
一度も行った事がないが、最も有名な海外旅行先ではないだろうか。
いいらしいのだ。
せっかく行くんだから楽しむとするか。
青い上空。
広い海原。
白い雲海。
輝く砂浜。
なるほどね。
俺がハワイと聞いてすぐに思い付いたのが、
『ジュラシック・パーク』のロケ地じゃないか!
ということ。
ここしばらく、家の中で時間があればひたすら折り紙を折り続ける日々を送っている俺は、考えた。
『ジュラシック・パーク』のロケ地で、折り紙の恐竜たちを置いて写真を撮ってくる!
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体験隊のコーナーにぴったりじゃないか!
俺は出発の前の晩、パスポートをカバンに入れるよりも先に、折り紙を折り始めたのだった。
着いた。
ハワイって、絵に描いたような場所なんだな、って思った。
いやー、でも会社だから気を使う。
でしゃばってもいけないし、ダラダラしてても迷惑かかる。
上下間系の決まった団体行動はしんどいよー。
組織に属するというのは、例えて言うなら、手足をゆっくりバタつかせながら立ったままの姿勢で海に浸かっているような感じ。
泳いで遠くに行っちゃいけないし、潜ってもいけない。
そこにそのままでいなきゃいけない。
ホテルで着替えた後は、とりあえずみんなで町を歩く。
いついかなる時に一人になれるか分からない。
いついかなる時にジュラシック・パーク関連に出会ってしまうか分からない。
なにしろ、例によって日本で何にも調べてこなかったから。
だから、腰のものに、デジカメと恐竜達は忍ばせてある。
同室の同僚に、バレないように恐竜達を移し変えるのがちょっと至難のワザだったが、まあ無事済んだ。
町行く日本人は多いが、きっと、
常にトリケラトプスとかプテラノドンなんかの折り紙を肌身離さず持ち歩いている日本人はそんなにたくさんいないと思う。
さあハワイよ。
俺は一体いつになったら一人になれるんだ?
いつになったらジュラシック・パークに行けるんだ??
(続く)
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