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オリジナル『カチンコ』を作る(3)

挑戦者:工房の主人


『ナット・ノーバディ』の撮影が始まった。
暑い暑い撮影が始まった。
そして、

カチンコも使用開始!!


使ってます。
(左から中舘基樹さん、小宮理代さん、南原健朗さん)


活躍してます。
えー、さっそくですが、面倒臭いので監督名とか記入するのを省いてます。

でも、森の中にカチンコのいい音がこだましてます。
なんだか映画の撮影みたいです!!

準備いいですかー?

よおーい!

スタート!カチン!!
(右から、馬場泰光さん、安藤彰則さん、梅津直人さん)

助監督の西山はなんだかうれしそう。
しかし撮影が進むに従って、カチンコの使用頻度は激減。
やがてはカルフの現場でほとんど使われなくなっていくのである。

理由は、『ナット・ノーバディ』の撮影場所にある。
こういう森の場合はまだいい。
しかし住宅地での、許可無しゲリラ撮影では、

とにかく静かに静かに撮影して目立たないようにしたいのに、何を好き好んでカチンコの大きな音を立てなければならないのか。

そして今回は車の中での撮影も多く、そもそもカチンコをたたくだけの人間を入れるスペースがない。
車内で耳の側でカチンカチンやられたら、こっちもカチンとくるってもんだ。(←ぷって笑うところ)

だいたいカチンコってのは、フィルムで撮影した映像と音声を「カチン」という音で同期させるために存在してるわけで、デジタルビデオの世界では(映像と音声を同時に収録する世界では)必要ないのだ。
せいぜい、編集の時にシーン番号とかオーケーカットなどを整理するのに役立つくらいのもんだ。
俺みたいに自分で映像のコンテを詳細に描く人間にとって、整理も糞もない。『ナット・ノーバディ』は2000カット以上あったが、編集で探すのに困ったことは一秒もない。だって自分で作り出した世界なんだから。

だったらなんでカチンコなんて作ったんだ。

誰が作ろうって言ったんだ!!

はい、僕です。

 

カチンコ不要論、いろいろ申し述べてきたが、俺がカチンコを嫌う理由は、実はもっと別にある。

だっていちいちシーンの何ですか?とか聞かれるの面倒臭いんだもん!
そのたんびに絵コンテとかめくって調べないといけないんだもん!
それに100%絵コンテ通りに撮影するわけでもないんだから、カット番号がない時もあるんだもん!
ただでさえ慌ただしいのに、カチンコを書き換えてる時間がうっとうしくて仕方ないんだもん!!

というわけで、カルフ専用オリジナルカチンコはおそらく今後使われないでしょう。
でもこれはこれで、形から入る俺にはいい思い出の品なのである。

ちなみに。



赤の→の場所、カチンコのバーの先に磁石を仕込んである。
カチン、と閉めた時に、ぴっちり閉まるようにするためである。

体育会系の西山は、初日からカチンコを力一杯たたき過ぎ…



磁石がひび割れてました。

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今だから明かしますが、実は西山と2人でカチンコの材料を買いに東急ハンズに行く前、とある映像専門店にも足を運びました。
そこで、俺たちは見てしまったんです。

1000円のカチンコを売っているのを。

それまで、「一万円以上するのなんて買えない!」「だったら安いオリジナルを作ろう!」と意気込んでいた俺たちにとって衝撃の現実。
一瞬黙りこくった後…

「これ、バーがヘナヘナ動いて弱そう…」
「これじゃあ、俺らの過酷な現場での使用には耐えられんな…」
「1000円程度の安ものだな…」

と、徹底的にそれをけなすことで、自分達の創作意欲を無理矢理かろうじて保ったのでした。

 

 

 

ちなみに今回のオリジナルカチンコの制作費は、4800円でした。

ありがちありがち…


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