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手作り映写機に挑戦する(3)

挑戦者:工房の主人


下町にある博物館に行けば、何かしらの情報があるのではないか。

昨年末にそんなことを耳にして以来、ずっと気になって気になって仕方なかったので、出かけてきました。
江戸東京博物館へ。
前回、『以前行ったことがあるところではないか』と書きましたが、違ってました。
この辺、似たような名前の博物館が多すぎます。

さて、あれからネットで調査を続け、ここに目的のものと同種類の古い映写機があることが分かっています。
もうネタはあがってるんだ、観念しな。
そんな気分で両国へ。
駅を出るとそこには、

両国国技館が!
意味もなくワクワクします。

で、その横を見ると、


あっさり発見。

今回は迷わずに済んだな、とホッと一安心。
なにしろ俺は驚異の方向オンチなのです。
先日、広島の実家に帰省した際、妹と話していて、彼女が俺の方向オンチを知らなかったことが判明。
「なんじゃあ、今までずっと知らんかったんか!」
「知らんわい。」
「お前は大丈夫なんか?」
「ぜんっぜん大丈夫よ。一回行ったところは全然忘れんもん。」
「あ、そう(動揺)。でも自分のお兄様のことくらい知っとけや!」
「うるさいわい。方向オンチじゃゆうて、恥ずかしー!」
「うるさいバーカ!」
「うるさいバーカ!」
…俺、もうすぐ30歳になります。

さて、迷う心配がなくなったので、なんだかすぐに博物館に入るのがもったいなくなってきました。
で、

散髪に行きました。

もともと博物館のあとに行くつもりだったのでこれはこれで予定通りなのです。

続いて、急に腹も減ってきました。

朝から何も食ってなかった。
この博物館のことを教えてくれた、前述のFさんが近くに住んでるので電話。
お昼だけ御一緒してもらいました。
おいしいものは、地元の人に聞くのが一番なのです♪



有名な(らしい)天ぷらのお店で、天どんをいただく!
あ〜しあわせ。
しかし何年か前もそうだけど、
どうも俺は博物館に行くと丼ものを食う傾向にあるらしい。


そしてその後、たい焼きも買い食い。

↑たい焼きとツーショット

お腹がいっぱいになって公園でひなたぼっこをしていると、

だんだん博物館に行くのがどうでもよくなってきました。

いかんいかん、これではいつものパターンになってしまう!
ここでFさんにお礼を言ってお別れし、一路(すぐだけど)江戸東京博物館へ!

しかし大きい。



入り口はなんと6F!
入場すると…



中も巨大!

その瞬間、

映写機

どーん!と急に頭の中に目的がいっぱいに広がりました。
よし、探すぞ!

博物館の中は、江戸時代から現在までの歴史に関するあらゆるものが、順番にそって展示されています。
まずは江戸時代。



精巧なミニチュアがすごいです。
江戸の町並み、風俗が完全に再現され、見る人の目をひき、足を止めます。
しかし俺の足は止まらない。
ミニチュアとか、俺、大好きなんです。
普段なら、ここだけで2時間くらいつぶせます。
でも、

すまん!すごいけど映写機が目的なんだ!
俺は小走りで駆け抜ける。



後ろから声が聞こえます。
「ねーお母さん、ここって写真撮っちゃいけないんでしょー」

うるさい!このガキが!

俺は小走りで館内を駆け抜けます。
江戸時代が終わり、大好きな幕末の展示に未練を残しながら明治時代、大正時代ゾーンに。
近い、近いぞ…



足下はガラスばりで、その下に大きな洋館の模型が。
こんなの、ほんとは俺、大好きなんです。
ここだけでごはん3杯くらい食べれます。

しかし立ち止まっちゃいられないのだ。
もうすぐ、もうすぐなんだ…

俺は駆ける。こんな手紙を、心の中に握りしめて。

僕はあなたに恋してます。
あなたのことは写真でしか見たことはないけれど、でも、ずっとずっと好きでした。
今日、初めてあなたと会える。
そう考えただけで、僕は胸が張り裂けそうです。

僕は駅に着いてから、もう脇目もふらさずここに来ました。

僕のこの気持ちを分かって下さい。
そして、受け止めて下さい!

はや歩きの俺の頭上に、『生活ゾーン』とかなんとかそんな文字が見えます。
辺りは、当時の電話機だとか時計だとか文化的なものが並んでいます。
俺の視線は、だだっぴろい館内をくまなくなめまわしていきます。

目的、ただそれだけを探すターミネーターのように。



トランジスタテレビ。
なるほどな、こんな時代だったんだな。
しかし映写機!映写機!テレビじゃない。

やがて辺りは戦争ゾーンに。
身体の中心あたりがキュっとなり、心臓がドキドキ始める。
話はそれますが、俺は実は戦争の展示だとか記述だとかいったものが嫌いなんです。
あまりにもつらくなってしまうから。
もちろん、過去にあったことを知ること。
それは大事なことです。そしてその事実は正確に次代に伝えていかねばならない。

でもね、それと同時に大事なのは、平和な状態を愛すること。
この博物館の展示に関してではなく、あくまで一般論として聞いてほしいですが、

戦争をするとこんなに悲惨なんだよ、こんなにひどいことをする連中なんて野蛮なんだよって教育するよりも、
平和な状態だとこれだけ楽しいんだよ、憎しみを取り除いたら、これだけいろんな人と仲良くできるんだよ、ということを伝えたい。

誰だって平和がいいに決まってる。
だから上のような気持ちで子供にも接し…
(急に子供が俺の前に飛び出してきた)

オラ、邪魔だ!どけコラァ!!

急にあたりは殺風景になってきました。
そして そこに俺が見たものは…




今回は、オチはいらない、オチは!
笑いはとらなくていいのです!
俺はマジで見たいんです!
どうか見せて下さい!神様、仏様、館長様!!

インフォメーションセンターにいた女性に声をかけました。
あの、昔の映写機を探してるんですが…
「ええっと、それでしたらこちらになります…」
係りの方は丁寧にも一緒についてきて案内してくれます。
「映写機は人気ですから」

そうか、人気だったのか!そうかそうか。
「この辺りのですね、大正時代の生活コーナーに…」
俺は辺りを凝視する。この辺はさっき見たぞ。でもまあいいや。きっと見落としたんだ。
「あれ…」
ん?
いつもはここ辺りにあるんですよ。」

「今はお正月の特別展示でかなりのものの展示が入れ代わってまして…」

「今は展示されてないみたいですねえ。」

そうか、そうか、俺は別に見落としてたわけじゃないんだな、俺が悪いわけじゃないんだな、よかった、よかった。
…って、

違ーーーう!!

ウソだ…
呆然とした俺に対し、係りの女性もちょっと哀れんだ表情で言葉を濁して去って行きました…

 



↑展望台より

江戸東京博物館史上、最速とも言えるだろう滞在時間で俺は出口を出た。
館長様、俺の歴史的記録も館内に保存しておいて下さい。


切ない。

俺は心の中のラブレターをビリビリにちぎった。
展望台から、東京の町に見えない紙切れが散っていく。


ふと目に入る文字。
『図書館』



ここなら何か手がかりがあるかもしれない。


今回は長くなってしまったのでここから先は一気にまとめて書いてしまいます。
結局、検索パソコンでいくつかの資料は見つかったものの、すべて『閲覧できません』ばかり。
本棚の中の、子供向けの『昔のくらし』みたいなタイトルの本の中にひとつだけ写真を発見することができました。
そこには、文章で少し使い方が書いてありました。
それを読むと、ある程度の仕組みが頭に広がりました。

手回し映写機

そうか、活動幻灯機なんて名前じゃなくてこれでいいんだ。
俺はその写真をそっと指でなでました。
今まで見た中で、もっともきれいな写真です。
コピーをとりたいものの、これはかなりきれいなカラーコピーじゃないと真っ黒につぶれたコピーになっちゃいそうだなあ。
そんなことを考えていたら、ふとある考えが頭をよぎりました。


そうか。

俺はずっと何をしてたんだ。

手回し映写機を作りたいんであって、俺は別に、そっくり同じものを再現するのが目的ではないのだ。


ということは、仕組みが分かればそれを自分で作っていけばいい。
もう、実は本物はなくてもなんとかなるんではないのか。


次回、実際の制作に入ります。


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