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イタリア国旗に敬礼! −カプレーゼ−

「カプレーゼ」なんていうと大層なものに聞こえるけれど、何てこたぁない、モッツアレラチーズとトマトの前菜のことである。だけどそんな、モッツァレラとトマトを切って、バジルを添えて並べただけの「なんてこたぁない」ものが、ちょっといいレストランだとけっこうなお値段だったりする。
はっきり言って、モッツァレラチーズなんてそのまま食べてもたいしておいしくない。もちもちとした食感は新鮮だけれど、味も香りもほとんどしないし、チーズというよりは弾力のある豆腐である。トマトをそのまま食べたらただの冷やしトマトだし、バジルをそのまま食べるなんてこともまずありえない。
しかーし!このみっつを切って並べてオリーブオイルをたらりとたらすと…見目麗しく、みずみずしくも美しいカプレーゼになってしまうのである。トマトと出会うことでモッツァレラのもっちりとした歯ざわりが引き立って、トマトの甘酸っぱさが口の中に弾ける。そこにバジルがアクセントを添えて、すっきりとした芳香が口の中を吹き抜けていく。ポイントはやっぱりフレッシュバジルを使うことではあるまいか。なかったらドライになったものをオリーブオイルと和えてかけてしまってもかまわないけど、やっぱりその差は歴然。ここはひとつ、ちょっと張り込んでフレッシュを使うことをオススメしたい。

この「モッツァレラ」と「トマト」と「バジル」という組み合わせは他にもあって、有名なところではピッツァ・マルゲリータが挙げられる。このピッツァ・マルゲリータはモッツァレラとトマトとバジルのシンプルなピッツァだけれども、どっかの国の王女様だか女王様だかがイタリアに来訪した際、そのお姫様に敬意を表して、イタリア国旗の赤・白・緑を使ったピッツァに彼女の名前「マルガリータ」を冠したものだとか。
この由緒正しさからしても、このみっつはまさにイタリアを象徴する組み合わせだとも言える。とりあえず3色っていうのも横着色もきれいだしね。梅干しを入れた弁当を日の丸とか言ってるのとはえらい違いである。

バジルといえばジェノバの港が有名。バジルを使ったスパゲティをジェノベーゼと呼ぶのはそのためである。
かつてジェノバはバジルの栽培が盛んで、昔の船乗りたちは空気の中にバジルの香りが強くなってきたことで港が近づいて来たことが判ったとか。すごいなぁ。海の上の空気がバジルの香りなんて、なんてすてきなんでしょう。これだけでパスタが何杯でも食べられそう。

…と、ここまで書いて、カプレーゼとマルゲリータって生かピッツァにのっけるかの違いだけで、基本的には同じだと気づいた。と、いうことは、もしかしてカプレーゼも国旗にちなんで考案されたんだろうか?もしそうだったらちょっとしつこい。できすぎな感もあるし、同じ組み合わせを使い回すというのも横着の極みである。…と思ったら、カプレーゼはカプリ島の人がモッツァレラをこうやって食べ始めたのが最初だと知った。だから名前がカプレーゼ(カプリの風)はわけね。ほー…なるほど。ピッツァと前菜、このふたつの由来は全然違うけど、ジェノバ風がジェノベーゼ、カプリ風がカプレーゼっていうネーミングの安易さは、やっぱりちょっと横着なんじゃ…と思ってみたりした。


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