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開店☆みなづき食堂

トラットリアの誘惑 −イタリア料理−

貧乏くさい話ばかりしていると愛想をつかされてしまいそうなので、少しはこじゃれた話もしてみようと反省した。
突然だけど、イタリア料理が好きである。どんなに気取ってみたところで、どこか大雑把で陽気なイタリア料理に限りない愛情を感じてしまう。
個人的な嗜好だとは思うけれど、同じ西洋料理でもフランス料理は洗練されてはいても、なんだか化粧臭い年増女を連想してしまってちょっと苦手。ずっしりと重たいバターやクリームが苦手なせいかもしれない。
そこへ行くと、イタリアンの基本はオリーブオイル。イタリアやスペインでは、バターの代わりにオリーブオイルをパンにつけて食べる。最初は油っぽいんじゃないの?と驚いたけれど、いやいやとんでもない。バターに比べて後味もさらりとしていてまことにうまい。このオイルにアンチョビやガーリックを漬け込んでおくとまた一味違ってさらによろしいことになる。
そういえば、ものの本にはガーリックトーストの作り方について「にんにくの切り口をパンにこすり付けて…」なんて書いてあるけれど、にんにくのみじん切りを漬け込んだオリーブオイルをさらりとかけて焼いてしまえばいいんである。焼き上がったらパセリなんかをぱらぱらすれば、見た目も香りも良い一品となる。

他にもチーズやトマト、バジリコやなんかの素材にも目がないし、生魚を食べる習慣は日本文化にも近いものを感じる。もっと言ってしまえば、中華料理との共通点も見つけることができた。それは「にんにく」と「とうがらし」。このふたつにオリーブオイルを足せばイタリアンになるけれど、ゴマ油と組ませれば中華の道へ一直線である。「子は鎹(かすがい)」ならぬ「にんにくととうがらしは鎹」というやつ。オイルの種類でその後の趣向がぐっと変わってくる。育ての親で子供の一生が左右されるのとよく似ている。(なんのこっちゃ)

そこまで判ればなんてことない。わざわざレストランへ行かなくても、おうちでイタリアンなぞお茶の子さいさいである(本当か?)とりあえずにんにくととうがらし、オリーブオイルの一瓶も常備しておけばなんとかなる。そういえば本当かどうかは知らないけど、貧乏暮らしが続くとぺペロンチーニを作るのがうまくなるという。その真意は定かじゃないけど、こじゃれたイタリア料理屋に縁の遠い一人暮らしボーイズにこれ以上向いているイタリアンもないんじゃないかしら。
ドライパスタとにんにくととうがらし。それにオリーブオイルがあれば済んじゃうんだもの。どれも保存の効くものばかりだし、突然のおうちデートの時にも焦らずに済みそう。「ちょっとおなか空いたなぁ」なんて彼女が言ったら、すっと台所に立ってみるなんてちょっとかっこいいじゃない?たっぷりのお湯に塩をひとつかみ入れてドライパスタを時間通りに茹でる。その間ににんにくと唐辛子を細かくみじん切り。フライパンにちょっと多めにオリーブオイルを入れたら、みじん切りにしたにんにくと唐辛子を入れてから火を点ける。フライパンを温めてから入れるとこげちゃうからね。オイルがあったまってにんにくに軽く色がついてきたら、パスタを入れてよく混ぜるだけ。仕上げに塩こしょうをぱっぱっぱ…で完成である。
この間、だいたい15分。
ささっと作って彼女に出せば、株が上がること請け合いである。それに「うちにそうめん食べに来ない?」じゃなんともカッコつかないけれど、「うちにイタリアン食べに来ない?」なんて女の子を誘って、このぺペロンチーニを出したって文句を言われる筋合いはないんである。何を言われようが嘘はついていないんだからね。ただし本当にやらかしてひんしゅくを買い、下心が玉砕したとしても当方では一切責任は負いませんとだけ言っておこう。

あー。こんなこと書いてたら食べたくなっちゃった。そういやソアベの買い置きがあるし、モッツアレラチーズでも切ってイタリアンな気分にひたろうっと。


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