ホーム 開店☆みなづき食堂 > 成人向けワンダーランド −おこさまランチ−

開店☆みなづき食堂

成人向けワンダーランド −おこさまランチ−

おこさまランチといえば、車だか飛行機だかの器に盛られていて、「おもちゃ付き」というフレーズに心をときめかせた記憶を誰でもお持ちのことと思う。
親にしてみれば子供はこれが好きだろうと思い込んで注文するのだろうけれど、私はこれが大嫌いだった。作り冷ましてカチカチのハンバーグや、乾いたようなケチャップまみれのスパゲティは言わずもがな、冷たくなったエビフライに勝手にかかってるタルタルソースや、申し訳程度に付いているサラダの甘ったるいピンクのドレッシングを憎んだ。
親が食べていた和風ハンバーグやグラタンの方がどんなにおいしそうに見えたことか。4歳から酒を飲んでいる子供の味覚をバカにしてはいけないんである。

そんな風に、子供の頃のおこさまランチに良い思い出はないけれど、学生時代にバイトしていたファミレスの「おこさまプレート」はおいしそうだったなぁ。フライドチキンとロールパンに、フライドポテトとカップポタージュが付いて¥380だったと思う。けれど、子供向けのメニューというのは価格が安い割に原価がかかっている。つまり、子供連れの客を呼び込むために赤字ギリギリで提供してるわけ。だから大人はオーダーできないし、店で出している物と同じメニューを頼めるはずの社食でもオーダーはNGだった。そんなこんなで、大人ならではのおこさまランチ。昔のラインナップから、今の味覚に合うようにグレードアップさせて作ってみたいと思う。

●まずは伝家の宝刀、オムライス: 子供向けならケチャップまみれにするんだろうけど、そこは「大人のオムライス」である。ブイヨンで炊いたごはんに甘みを抑えたトマトソースで。ハート型に抜いてみたのは愛嬌というもの。
●ハンバーグ: ケチャップかけときゃいいだろってのは大人の手抜き。反発の気持ちも込めて、きのこのデミグラスソースにしてみました。
●エビフライ: このへんは王道なので、お好みで。
●チキンナゲット: しょうが醤油か、キムチの素+お醤油+お砂糖少々で下味をつけて、やっぱり大人テイストを目指してみたり。
●グラタン: ホワイトソースにもチーズを溶かし込んで、けっこう濃厚な味になっています。
●ポテトサラダ: マヨネーズ+粒マスタードを3:1くらい。サワー&スパイシーでなかなかいけますよ、これ。
この他にも、トマトソースのスパゲティや、黒胡椒をぴりりと効かせたカルボナーラなどを付け合せることもあるし、チキンカツや渋く鶏の照り焼きなんかを添えることもある。



これこそまさに、童心を忘れた大人たちに捧げたい『大人向けワンダーランド』ではないか。なんなら旗も立てまっせ!とふざけてみても、それって大いなるノスタルジーを呼び覚ますものではないかしら。言ってみればその感覚って、昔行ったことのある遊園地に改めて行ってみると、遊具の小ささに驚いてみたりする懐かしい気分に似ているかも知れないし、あるいは、昔読んだ童話をそうっと開いてみる感覚にも似ていると思う。昔は美談としか思わなかった童話も、大人になるとダークな感じがすることがあるしね。赤い靴、とか、ヘンゼルとグレーテルなんか、今読み返すとけっこう怖い。でもそれは、自分が大人になった証であって、かつての自分を映し出す鏡なのかも知れなくて。だったら今一度、あのころの気持ちを思い出すべく、おこさまランチなるものを追体験してみるのも悪くないかも。だけど、正直言って、今食べると本気でまずいと思うよ、市販のおこさまランチって。

なんだか変な話になったので、ついでだから童話にかこつけたシリーズなんかも行ってみようかな、と思ったところで本日は閉店でございます。


All rights reserved © 2004.3. Tomoko Minazuki