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開店☆みなづき食堂

酒飲みの主張 −前菜−

夕方になる。さて、今夜はゆっくり飲もうかな、などと思う。うちの家主(あちこちで『同居人』と書いていたことがバレてしまい、パラサイトの分際であつかましい!と厳命が下ったため改名)はしっかりごはんだけれども、私はそんなもん食べる気は毛頭ない。だって、酒飲みの夜は長いんである。…というわけで、軽いおつまみでも作ろうか、と冷蔵庫を開けてみる。

玉ねぎやオクラ、山芋なんかがあればしめたもの。適当に切っておかかをぱらぱら。おしょうゆをかけて頂く。いわゆるオニオンスライスとか、山芋の千切りというやつである。お豆腐があれば、キムチやザーサイ、おくらや納豆を適当にのっけて「ただのお豆腐」をどんどんお洒落してあげるのもいいかも。ああそれに!納豆といえば、オクラやいか、これまたキムチ、あればまぐろなんかと和えてみると、日本酒にばっちり合う一品になる。あるいは、野菜カゴに眠っているにんじん、キャベツ、大根、きゅうりなんかを適当に切ってみる。単純に野菜スティックというやつだけど、マヨネーズ以外にも、お味噌に長ネギのみじん切りとおかかをまぜて「ねぎ味噌」にしていただくのもなかなかよろしい。マヨネーズが好きな人ならマスタードやケチャップ、玉ねぎのみじん切り、たらこなんかを混ぜるといろんなバリエーションが楽しめる。あるいは卵。ねぎの切れっぱしとごま油、お塩もちょっと入れて中華風の卵焼きにしたり、ウインナーやチーズを入れて小さなオムレツを作ってみたり。裏技的手法なら、殻のままコーヒーメーカーのケトルに入れて、たっぷりのお湯を注いでスイッチを入れる。15分かそこら、そのまま放っておくとどうなるか。温泉卵ができちゃうんである。ま、このへんは主材料+αの簡単な前菜という感じ。前の項でも書いたけれど、前菜は思いつきだからね。冷蔵庫に残っているものでちょこっと作ってみるのが楽しい、刺激的かつトライアルな分野。「なんにもなーい!」と思っても、けっこう何とかなっちゃうのが楽しいひと時だったりする。

そういや、実家ののりちゃん(註:かなりいかれた実家の母)に教わった技で、かなり重宝している秘儀がある。すなわち、酢の物の場合。モノの本には「薄切りにしたきゅうりに塩を振って塩もみに…」なんて書いてあるけど、それってけっこう面倒。さらに三杯酢を煮立てて…冷まして…なんてやってたら、酔えるものも酔えなくなってしまうではないか。…で、のりちゃん技。小さなボウルに水を張って、ちょっと濃い目の塩水を作る。そこへスライスしたきゅうりをどんどん落として行く。そのまま放ったらかして10数分。きゅうりがしなっとして来たら、水洗いしてぎゅっと絞る。その間に乾燥わかめを水もどしして、かまぼこ、とかちくわ、とか、いか、とか蒸し鶏(鶏肉をレンジで加熱)なんかを用意する。塩もみきゅうりにわかめ、その他の材料を小鉢に盛ったら、米酢をだーっとかけて、おしょうゆを少々。これで「酢の物」ができちゃうんである。

同じくきゅうりを使ったもので言えば、タコキムチがある。きゅうりと茹でたたこをざくざく切って、市販のキムチの素をだーっとかける。仕上げにごま油を少々。このごま油が良い風味をかもし出してくれて、なかなかオツな一品となる。このキムチの素は「鶏の唐揚げ」や「お弁当用の焼肉」にも使えてなかなかよろしい。…けど、そこまで書いているときりがないので、いずれどっかで書くことにして次に進もう。

ま、そんな感じで冷蔵庫にあるもので適当に小鉢を用意すれば、メインを作るまでの間も持つというもの。特に来客があった場合などは、それらを適当につまみつつお酒など飲みはじめてもらう間に、別のお皿を用意すればいいんだもんね。これからの季節ならお鍋でもいいし。そのうちお酒も回ってきて、メインのお皿を出したところで料理の味なんかどうでもよくなっちゃう…ってことを期待していたりもする。それはそれで一挙両得。してやったり、という感じである。

ところで、料理の合間あいまに何か出そうと思ったら、作りおきできるものが活躍してくれる。南蛮漬け、煮物、あんかけ、とかね。南蛮漬けは寝かせたほうが味がしみておいしいし、冷たいままでも充分おいしくいただける。煮物は冷めて行く間に味が染みるから、作り置きしたものをレンジやお鍋で温めなおしても、ほんの2〜3分。あんかけは揚げ物だけ先に揚げておいて、あつあつの「あん」をかけてサーブすればそれでよし。居酒屋みなづきが普段、どれだけ手抜きしているか判りそうなもんである。

ただし、手抜きはしてもサーブの仕方はちょっと考えてみたりする。お酒呑みの人が多かったら小鉢の前菜やあっさりめのもの⇒味の濃いもの、ボリュームの多いものへと移行させて行く。酒飲みの人にいきなり米!とか麺!とか揚げ物!なんて出しても持て余してしまうというもの。逆に、あんまり飲まないなーという人がいる時には、ちょっとした食事代わりになるものを先にしてあげた方が気が利いている。あんまりちまちましたものばかりだと物足りなくなっちゃうから、お料理のガルニ(添え物)にお米やパスタを使ってみたりね。…ま、そのへんはゲストによって適当に変えればよし。

そんなこんなで居酒屋みなづきでは365日・24時間ご予約を承っております。そういや今日は忘年会の予約が入ったんだっけ。12月初旬に8名様ご来店の予定。8名+家主と私+トラとハンセンと虎鉄。総勢10名余りがうちのリビングに入るのか!?という問題を残しつつ、楽しいメニュー作りに入ることにしようっと。(何の話だ!?)


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