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開店☆みなづき食堂

愛しきパーティ・ピープル −居酒屋−

冷蔵庫の残り物で夕飯にすることを、うちでは「居酒屋メニュー」と呼んでいる。一人前にもちょっと足りないような、中途半端な残り物を適当に出すだけのことである。
ちょっと残ったポテトサラダ、とか、数えるくらいしか残ってない餃子、とか、肉の切れっぱしが見え隠れするくず野菜の野菜炒めとか、作り置きしていたコロッケが一個だけ残ってるじゃない!…あらら、鶏のからあげが2個しかないわーの揚げ物盛り合わせとか、そんなハンパ者の吹き溜まり。したがってテーブルには小皿ばかりがならぶことになる。普通に考えたら貧乏くさいことこの上ない。それが「居酒屋式!」と前置きをするだけで、なんとなくカッコがついちゃうから不思議である。(つかねえよ)

私はもちろんお酒をいただくが、相手は飲まない。さてどうするか。これまた簡単。「ごはんセット」を用意すればいいだけのこと。ごはんとお味噌汁と小鉢に盛ったお漬物なんかを小さなトレイでサーブする。あらら、なんて居酒屋的。類似系ではカフェメシというのがある。ごはんか麺+残り物のおかずを適当に大皿にのっけて出すだけ。「洗い物が少なくて済むからだろう!」と裏を読まれているのがなんとも情けないけど、「カフェではこうやって出すの!」と言い切ってしまえばいいんである。

話が横にそれたけど、居酒屋…好きだなぁ。
なぜかと言えば、いろんなものがちょっとずつ食べられるから。居酒屋は別にしても「いろんなものをちょっとずつ」って、女の子はけっこうみんな好きだと思う。大人数だと本当に一口くらいにしかならないけど、これって日本人ならではの感覚じゃないかしら。中華料理もそんな感じだけど、ボリュームが多すぎるのがちょっと難。ましてや、ウルトラ個人主義で成り立っている欧米諸国にはそんな習慣はない。彼らは、きちんと自分のお皿に盛り付けられたものを行儀よく食べる。互いの皿に手を出すことは卑しく、日本の女の子がよくやる「一口ちょうだい」っていうのは行儀の悪いこととされている。昔アメリカ人と付き合っていた頃には、彼氏のお皿に手を出して何度怒られたことか。なんだよー、けち、と心の中で叫んだのも懐かしい思い出である。

そういえば居酒屋でバイトしている子に聞いた話だけれど、「お一人様一品ずつオーダーしてね♪」というシステムのその居酒屋に、アメリカ人と思しき3人の外国人が来たことがあったとのこと。彼らは刺身と唐揚げと…と、とにかく3品をオーダーした。
…で、どうなったか。
それぞれ自分がオーダーしたものを食べたんだそうな。「お刺身盛り合わせ」を頼んだかわいそうなアメリカ人は、とにかくお刺身だけを黙々と食べ、鶏の唐揚げの人はそれだけを食べていたらしい。ひたすらお刺身だけを食べ続けるなんて、考えただけでも胸焼けがしそう。シェアという言葉さえ知っていればそんな苦しい目に合わずに済んだのに、個人主義の行儀のよさが裏目に出た瞬間である。バッカで〜と、昔の腹いせに悪態をついたことは内緒にしておこう。

そういやスペインには、タパスっていう小皿料理がある。そのハマグリをひとつかみ、あのオイルサーディンを3本…っていう風にオーダーする。一見、日本の居酒屋のようではあるけれど、それはあくまでも「自分が食べる分だけを少しづつオーダーするためのシステム」であり、シェアというのとはちょっと違う。そう考えると居酒屋は、世界に誇るべきコミュニケーションに満ちている。
なんともすばらしいことではないか!だから高いレストランで行儀よく食べるより、やっぱり居酒屋に足が向いちゃうんだよね。ふーんだ、どうせ育ちが悪いのさ。


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