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開店☆みなづき食堂

¥80の境界線 −牛すじ−

なんでいきなり牛すじ?と首を傾げる方もいらっしゃるかも知れません。「牛すじって何!?」って思う人もいるかな。
個人的な見解を言ってしまうと、私は基本的に牛肉が嫌い。だって、アメリカでご馳走だよ♪と言って出されるのはいつだって肉だった。バカの一つ覚えでもあるまいし「とにかく肉さえ食べてればシアワセ」という横着な思考や、たいしてうまくもないガチガチのステーキをありがたがって食べるという無神経さが信じられなくて、いつからか肉、それも牛肉を毛嫌いするようになっちゃった。簡単に言うと「飽きた」という現象。だから高いお金を出して肉なんか食べるより、ちょっといいお刺身が食べたいなってことになってしまうのだ。
なのになんで「すじ」なのか。それはズバリ安いから。なんてったって安いが一番。うまいが二番である。グラム80円くらいで買えちゃうくせに、煮込み料理に使うとそこはかとない旨味をかもし出してくれる。

ところで、うちの同居人は西の生まれである。牛すじ、といって一番初めに思い出すのは「おでん」だと言った。
「牛すじって言ったらやっぱおでんやろ」
「でも、おでんだと味が薄くない?」
「せやけど、子供の頃、おでんの具で一番楽しみだったんは牛すじやったもん」
彼にとって、それは温かくも懐かしいノスタルジーの味なのだろう。一方、牛すじと言って私が思い出すのは「カレー」である。

お恥ずかしい話だけれど、私が子供の頃、我が家は貧困のどん底にいた。当時の父親が爆弾みたいな借金を残して遁走っしたためである。家計はいつも火の車だったのか、母親がビーフカレーといって出すのは牛すじ肉で、チキンカレーは手羽先が多かった。けれどそれならまだ許せる。だがさすがに「スルメ」をカレーにぶち込んで「シーフードカレーだよ」と言われた時は、本気で家出してやろうかと思った。尚、これは嘘いつわりのない実話である。

閑話休題。
くず肉扱いされている牛すじだけれど、じっくり煮込むととろとろのうまうまになる。カレーやビーフシチュー、大根やじゃがいもと煮てもいい。ワイン煮もおいしい。…というわけで、ここではワイン煮とシチューを取り上げてみたい。
2人分だったら、すじ肉400g(グラム¥80円換算で¥300くらい)を赤ワイン1/2本と、大きく切ったにんじん、たまねぎ、にんにく、セロリ、ベイリーフと一緒にワイン1/2本を注いで冷蔵庫で2日くらい寝かせる。これを3〜4時間、コトコト煮たら、塩こしょうしてできあがり。

ビーフシチューも至って簡単。牛すじ肉をお湯+赤ワインで2時間くらい茹でたところに、炒めた人参と玉ねぎ、ベイリーフをどどど…っと入れる。人参が柔らかくなったら、お好みでじゃがいもをいれてもいい。お野菜が煮えたら、トマトホールとデミグラスソースを投入。ウスターソース、塩こしょうで味を調えてできあがり。面倒だったら市販のシチューの素なるものを使ってもいいしね。
シチューはそのまま食べてもいいけれど、残ってしまったら小分けにして冷凍しておくと、意外な時に力を発揮してくれる。
じっくり煮てるからおいしいこと間違いないし、ソースとして使うとばっちりなんである。ただしその時はじゃがいもは取り除く。ソースにする時にモタモタになっちゃうからね。

そんなわけで、次回では「ソースとしてのシチューの威力」をご紹介しようと思います☆


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