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開店☆みなづき食堂

革命の瞬間 −ピッツァ−

これまであれこれと書いて来たけれど、キッチンに立つのは嫌いじゃないとはいえ、たまに何を作っていいか判んないドロップゾーンに落ちることがある。だからと言って外に食べに行く、という選択はほとんどない。基本的に行動半径10mくらいで生活しているので、外に出ることを考えただけで億劫になってしまうのだ。そんな時は、結果的にデリバリーを頼むことが多い。今のご時世、ケータリングサービスは数々あるけれど、我が家のデリバリーメニュー人気宸Pはなんといってもピッツァだった。

何にも作りたくなーい!とヒステリーを起こした時。買い物に行けなくて冷蔵庫がカラカラの時。私の機嫌が悪い時。同居人は「ピザでも頼む?」と声をかけてくれる。すると私の機嫌はケロッと直り、何もしたくないとふて腐れていたのも忘れて「サラダくらい作るかー」といそいそキッチンに向かうのだ。

ピッツァのデリバリーチェーンはいくつもあるけど、私はハットさんが好き。昔LAにいた頃よく食べていたアントニーズピッツアというブランドにちょっと似ていて、平たいケースを開けた瞬間、なんだか懐かしい気分になるのだ。しかーし!アメリカンテイストに似ているということは、その分チーズもトッピングもてんこ盛りで、カロリーの高さが恐ろしいシロモノであることも確か。そんなカロリーの高いもんを月に何度も食べていたらあっ!という間に肥ってしまう…というわけで、うちでは「ピザは月に2回」という厳戒令が敷かれることになった。そんなこんなで、我が家におけるピッツアの地位は最上級。言ってみれば「神の領域」だったのだ。

ところでうちの実家のパパは料理がめちゃくちゃ上手い。中華も和食もオールオッケーなのだけれど、なんと言っても圧巻はフレンチイタリアンで、その腕前はまさにの巨匠。例えば、夜中にいきなり押しかけて「ムールとラムが食べたい。サラダは生ハムがいいなぁ」なんてふざけたことを抜かしても、そうかそうかとその通りの物を作ってくれる。私の作るイタリア料理は彼からの直伝なのだけれど、まだまだ足元にも及ばない。とどのつまり、そんじょそこらのレストランに行くくらいなら実家ごはんのが何倍もおいしいというのが我が兄妹の不動の共通意見である。

そんな家だから、クリスマスやバースデーのパーティはやっぱりイタリアン。締めには必ず自家製のピッツァが出る。私はそれを「すげえなぁ…」と思いはしても、イーストがどうの、発酵の時間が…なんて考えると、どうしてもトライすることができず、実家で作ったピザ生地をいそいそもらって帰る立場に甘んじていた。

けれど実家に泊まったある日の午後。「これから作るよ」という声に、キッチンにすっ飛んで行った。このチャンスにぜひとも伝授してもらおうと思ったのである。
「粉とかイーストって何グラム?」「そーゆうめんどくさいこと聞くなよ」「お湯の温度は?」「手を入れてちょっと熱いくらい」「どんくらい練るの?」「適当」「ちゃんと教えてよー」「いいんだよ適当で」
「料理は2,3回失敗すればうまくなる」というのが彼の持論らしく、何を訊いても適当、としか教えてもらえない。しょうがないからパパの後ろにべったりくっついて、最初から最後までばっちり観察させてもらった。頭が揺れて中身がこぼれないようにそうっと持ち帰ったレシピでさっそく作ってみたら…。

おお!できたではないか!適当にやってもあんまり失敗しないよ、という言葉通り、けっこう簡単だったのだ。…というわけで、それからピッツァはうちのレギュラーメニューとなった。もちろんお店で頼むピッツァとは違うけど、その分チーズを低脂肪にしたり、カロリーハーフのマヨネーズを使ったりすることもできるし、具合悪くなりそうなほどアンチョビを乗っけたりっていう、好きなものを好きなだけ…とトッピングも自由自在。



以来ピッツァは、なに作ろっかな…と悩んだ時などに「とりあえずピッツァでいっかー」という扱いを受けることになってしまった。同居人も「またピッツァ〜!?別にいいけど…」くらいのリアクションである。まさに現人神(あらひとがみ)が人間宣言をしたくらいの、歴史的改革の瞬間を迎えたのである。

そんな話をブログに書いたら、水戸在住のSちゃんから「レシピおせーて」とコメントが寄せられた。…というわけで次回は「おうちでできる簡単ピッツァレシピ」をお届けしようと思う。Sちゃん遅くなってごめん。それと出産おめでとう☆


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