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18禁なお話その4
「バーの地下で‥‥」の巻
le 19 juillet 2004

 マキシムとオリビエに貸していたアパートをまっすぐ下ったあたりの場所に、やたら小さいバーがあるらしく、2人は毎晩のようにそこに入り浸っていたと言っていました。なんでそんなところに?わたしや夫はその店の存在すら気がついていなかったくらいの小さくてケチな感じのするバーで、アイリッシュ・パブのほうがよっぽどか雰囲気が良いのにってワタシなんかは思うんだけど。それでも彼らはそのバーに通い続けていた。  

 ほぼ毎晩のように行き、時には朝方までビールを飲み続けていた彼ら、1週間もしたら店のおやじさんと仲良くなって、ビールも安く飲ませてくれるようになったとか。つまりは常連さんの仲間入り、ですね。  
 で、他の常連さんたちと言えば‥‥これは夫の推測なのですが、どうやら、無職とか浮浪者とかの、いわば世の中のつまはじき、アル中になってる人たちらしいのです。そんな所に行って何が楽しいんだ?ここはパリなんだぞ、他にやることはいくらでもあるだろう!と我が夫はものすごく不思議がっていました。  

 そんな日々の中、マキシムがウチに来た時に面白い話をしてました。
ある常連客の一人が彼らに向かって、「下が無くなって残念だよねー。」と力なさげにボヤいてたそうなんです。マキシムもオリビエも、地下に別の部屋があるらしいことは知っていたけど、その扉に「閉鎖」の文字が書かれていたので、気にも留めていなかった。しかし、その常連客の一言がどうも気になって気になって。それでウチに来た時に話したのです。  
 で、それを聞いた夫が思い出したかのように、「‥‥あ、そのバー、名前なんか聞いたことあるぞ、確か‥‥」と、思い出した内容とは、つまり、その地下が昔は文字通りのアンダーグラウンドな世界で、サド・マゾなことをしていた場所だったらしいのです。うわ〜!!これじゃ映画のまんまじゃないか!(注:フランス映画「結婚7年後」)  
 どうやら警察のガサ入れに遭い、今では地下は閉鎖され、地上階だけがバーとして営業を続けているらしい。  
 夫が言うには、バーと言えども営業許可は深夜2時までと法律で決まっているらしい。日本のように終夜営業の店は法律上は無いのです。しかし、マキシムとオリビエはそのバーに朝の4時まで居たこともあるとか。どうやら、店主は2時までで客の入店を断り、その後はカーテンを閉めて閉店したように見せ、店内にいる客にだけ飲ませていた様子。これは完全に違法行為ではあるけれど、そこまで警察もかまってはいられないのかも。もしいつかまたガサ入れがあれば、確実に閉店に追い込まれるでしょう。  

 そんな、映画に出てきそうな世界にちょっと魅力も感じつつ、でもワタシとしては純粋に友達とお酒だけを楽しみたいので、やっぱりアイリッシュ・パブで飲むほうが楽しいんじゃないかと思うんですけどね。最近、わたしは時々白ビールをオーダーします。ずんぐりした形のグラスにレモンが一切れ入っていて、夏には爽やかで、う〜ん、ウマイ!って感じ。  

 しかし、しかしですね。そんなサド・マゾの場所は、一軒は消えてしまったけども完全に消滅したワケではない。パリのどこか、アンダーグラウンドな世界で、まだ今でも密かに続いているに違いない。だって、ピガールには沢山そのテのコスチュームを売る店が並んでいるんですから。


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