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18禁なお話その2
「ポン引きに捕まった!」の巻
le 19 juillet 2004

 カナダから友達が2人来た。数年来のネット友達のマキシム君19歳と、彼の友達のオリビエ君18歳。彼らとは、すでにカナダにて会っており、わたしたちはもう家族も同然の間柄。というワケで、彼らの夏休みの間、ウチのアパート(旧居)をタダで貸すことにしたのです。カナダ人とはいえ、ケベック出身の彼らは仏語(ケベック語)が母国語で、カナダの公用語である英語もペラペラ。加えてマキシムは四国の高校での留学経験もあるので日本語もかなりペラペラ。  

 彼らにとってはこのフランス旅行が「初めての冒険」。なので、できるだけ無用な手助けはしないことにしました。パリに着いた時も、本来ならば空港まで迎えに行ってあげるのが筋だとは思うけど、「言葉もわかるんだし、もう18歳の大人なんだから。」ってことで自力でウチの近くのアベス駅まで来てもらうことに。「アベス駅に着いたら電話してね」とだけ言って。  
 電話が鳴り、アベス広場まで迎えに行き、彼らのアパートに荷物を置いた後でウチで夕食。その後、彼らは「初めての自由行動」となった。  
 18歳の男の子で、徒歩1分の場所にピガールが‥‥となると、メ散歩モしないではいられないハズ。我が夫もそれは承知なので、事前に「ポケットに現金数ユーロだけ入れておいて、財布やパスポートは持ち歩くな」と指示。そして、彼らは意気揚々とピガールへ向かったのでした。  

 翌日、ウチに遊びに来た彼らからの報告に、びっくりするやら笑うやら。というのも、まさに型どおりに「ポン引きにつかまって、店内に入り、有り金全部盗られた」というのだから。アホやな〜と思いつつも、無傷で出て来られたことに皆で心底ホッとしました。  
 彼らが言うには、ピガールからクリシーに向けて歩いていたら、ポン引きが「タダにしとくから飲んでいきなよ」って声をかけてきたんだとか。タダかぁ‥と思って、店に入ることにした2人。(しかし入店料はちゃっかり10ユーロずつとられていた。)店に入ると、お客は彼らの他は誰もおらず、とっても妙な雰囲気。しかし、すぐに女の子が二人寄ってきて、2人の脇を固める。(逃がさないようにするための作戦か?)で、そのうちの一人の女の子が勝手に「ストリップ・ドリンク」なるものを注文する。で、オリビエの膝の上で踊りだしたらしい。(これがストリップだったのかどうかはわたしは聞いてないので不明。)で、普通のカクテルを飲んで、それから‥‥‥  
 「お勘定を。」といって請求書が出てきた。そこには200ユーロと書かれていたらしい。(日本円にして2万数千円。)そんなバカな!俺たちはストリップ・ドリンクなんて頼んでないぞ!女の子にも触ってないぞ!第一、外のオヤジはタダだって言ったじゃないか!と反論する2人。が、時すでに遅し。やたら強そうな男に取り囲まれ、どうやら払うしかないなと諦める2人。しかーし!ここで我が夫の忠告が威力発揮。彼らはポケットに2人合わせても50ユーロ程度しか持ち合わせていなかったのです。で、すでに入り口で20ユーロを支払っていたので、残りは30ユーロほど。これでは男も納得しないので、カバンの中をあさり、金目のモノは無いかと真剣そのもの。しかし、これもビンボーな若い子2人なので、金目のモノなどもともと無い。さっきまで2人の側に座っていた女の子がふいに「この帽子、もらってもいーい?」と男に聞く。(マキシムとオリビエはそれぞれ安い帽子をかぶっていた。)男は強い口調で「返してやれ。」と。  

 結局、被害額は「一晩飲んだ額」程度だったし、傷を負うこともなく出てこれたので、真剣にラッキーだったとしか言いようが無いです。あの場合、半殺しの目に遭っててもおかしくはないのだから。
 しかし、店に入ってから支払いまでの時間がわずか10分程度。そして、そのお勘定が200ユーロ‥‥なんてヤクザな世界なんだ!シャンペンの1本でも空けたのならともかく、安っぽいカクテル2杯で‥‥。  

 その話を、後日夫の友人でピガールで働いてた人に話すと、「うわー、よく生きて出てこれたな〜(笑)」って。  
 その人はピガールの「のぞき部屋」屋さんに勤めていたことがあり、そこのHビデオの部屋の客が注文した番号のビデオを入れ替えする作業をしていたんだとか。電話ボックスみたいな小部屋に客が入り、番号を押すと、裏にいる彼のところにランプが点る。その数字にしたがって彼は迅速にテープを挿入する。そういう仕組みらしい。これがものすごく忙しく、体力を消耗する仕事らしくて。(ということは、かなりの客があるということ?笑)いつでもボスに忠実に勤め、頼まれると不規則な出勤やオールナイトも引き受けた彼は、いまやボスのダチとも言える存在らしくて、ミュージシャンを目指す彼のコンサートにはそのボスもわざわざお姉さんがたを連れてやってきたんだとか。で、なぜか上着の内ポケットから封筒を出し、キャッシュでお金を置いて帰ったと。  

その夫の友人は、いつもそんなことを笑いながら普通のジョーク程度のことのように話す。でも、真剣にそれはマフィアな世界の話なのです。一歩間違うと、昨日までのダチが明日は死体となりかねない。

そんな彼が、まだピガールで仕事をしていた頃のこと。同僚の一人がポン引きに引っかかって、昨日もらったばかりの給料全部盗られたっていって半泣きで仕事に来たことがあったらしい。で、遅刻の理由としてボスにそれを話すと、「で、どこの店だ?ワシが話をつけてくる。」と言って出て行き、そしてみごとお金を取り戻してきた。

またある時は、夫の友人自身が駐車違反でキップ切られて‥とこぼしていたのをボスが聞いて、「ちょっと貸せ」とキップを取り上げ、片っ端から知り合いの警官を呼びつけ、店でタダで飲ませ始めた。半日の間、警官が店に来ては「あ、こりゃウチの管轄じゃないわ」と言って、飲んで去り‥の繰り返し。そしてついに「あ、これね。俺がなんとかしとくわ。」って。駐車禁止なんて、そんな程度で帳消しになるのです。というのも、ボスは警察とつるんでいて、毎月警察署に封筒に入れたキャッシュを送りつけているんだとか。で、そのお金は警察の人が山分け。夫の友人は、「ボスはいっつも封筒で仕事してるからなぁ」って笑ってたけど。それって‥‥裏金じゃん!ブラックマネーじゃん!表では使えないお金だよー!!  

 でも、そんな話をする夫の友人は、実はフツーの好青年で、エロい店の客になったことなど一度も無いといった感じの優しい顔の人。しかし、マキシム&オリビエと比べたら、裏の世界の知識は山ほどある。  
 マフィア、裏金、ポン引き‥‥これが「欲望と生活感」の姿なのかぁ、と思うのでした。

「昼間のムーラン・ルージュ」
 ここがムーラン・ルージュです。昼間はネオンも目立たず風車も回転していないのでちょっぴり寂しく見えます。でも夜になると、赤いネオンとゆるやかに回る風車が目立つ目立つ!  ここにもワタシは入ったことが無いのですが、入ったことある人の話では、「フレンチ・カンカンじゃなくてちょっとガッカリしちゃった。なんか高級なサーカスって感じだった。」ってサ。確かに、入手したパンフレットを見てもフレンチ・カンカンらしき写真は小さいのが一枚だけ、しかもわずか数人。。。  今、パリにはムーラン・ルージュ以外にも「リド」、「クレイジー・ホース」といった、同様のことしてる店があります。ムーラン・ルージュも今では大したことなくなってるんだろうなぁ。  ちなみに、向こうに見える LOCOMOTIVE というのはディスコです。



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