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vol.1 「撮影ごっこ」の巻

le 23 avril 2004

 わたしの住む町、モンマルトルは、パリ市の中でもけっこう下町情緒のある場所。パリならではの小さなカフェや個人商店がずらりと並んでいて、小さな路地や階段があり、どこを撮ってみても絵になる。だから撮影現場となることが多い。映画「アメリ」も舞台はモンマルトルで、わたしのアパートのすぐ近くにアメリが住んでいるという設定だった。

 さて、そんなモンマルトルに住んでいるので頻繁に「撮影」に出くわすんだけど、これは見ていてけっこう面白い。撮影と一口に言ってもいろんな種類があるワケで、上は有名監督の映画撮影、ローカルテレビや一瞬だけ映るCMの撮影もあれば、下 は映像科の学生さんの短編映画撮影なども。規模も雲泥の差である。

 以前、ジャン・ピエール・ジュネ監督の新作映画のロケに出くわした。その時は事前に撮影日時を記した貼り紙があちこちに貼ってあり、路上をトラックなどが占拠することに対する断りが書き記してあった。機材の数もハンパじゃないので、確かに、大きなトラックが道を占拠していた。撮影に動因された人数は数知れず。しかも警備の人が一般観衆を赤テープの向こうに押しやっていた。これが有名監督のロケ現場か〜、と関心しきり。
中級監督(?)もしくは本当に簡単なカットのロケになると、もっと設備面でも簡単だし、動員人数も少ない。カメラの台数やライトの数も少ない。テレビ放送の短い撮影ともなると、カメラマンとアシスタント二人くらいの、わずか数人で行われていることも。しかもこの場合、事前に断りの貼り紙なども無い。時として、映像科の学生がホンモノさながらに機材を運んで撮影していることもある。

これが映画撮影前にあちこちに貼られていた紙です。 監督名、映画(仮)タイトル、出演者、撮影日時、そして 占拠すると思われる道路の場所が書かれています。 撮影終了後、わたしのすぐ側にカチンコが置かれたので 「おぉ!!」と思って撮影。やたら嬉しがってしまったので 残念ながら手ブレ写真に…(涙

 そこでふと思いついた。「映画の撮影って、案外誰でもできるものなんじゃない?」って。
もちろん、カメラさえあれば誰でも撮影自体はできるんだろうけれど、ロケ現場の状況を考えると、なかなかそう簡単にはいかないのが現実というものだろう。
  では一体どうやって?たぶん、そこに居る人に「撮ってもいいですか?」って聞けばOKなんだと思う。公共の場であれば、本当は警察の許可が必要なはずだけど、短時間であればどうってことないと思うし。誰も、警察に電話して確かめたりまではしないだろうから。(それが営業妨害でもない限りは。)
ということはつまり、「撮影ごっこ」をして“撮影するという行為”を楽しむこ とも可能なんじゃないかと…。

 まず、機材を用意する。カメラ、照明、大きなマイク、カチンコ…そして忘れてはならないのが「赤テープ」。これをスタッフの溜まり場あたりに張り巡らせておくと、グッと「現場らしさ」が出てくるのが摩訶不思議。
カチンコを鳴らして、撮影開始。周囲の観光客なども必然的に足を止め、息をこらして成り行きを見つめる。それがホンモノの撮影現場なのか、ニセモノの現場なのか、誰も知る由も無い。だって、「監督は誰?何ていう映画?いつ公開?」って聞かれたところで、テキトウに答えておけば「あぁ、あんまり有名な監督さんじゃないのね」で終るから。比較的人通りの少ない路地や公園などを選んで「撮影」すれば、けっこう可能なんじゃないかと思う。
ただ単に、小さなビデオカメラを持って風景や家族を写しているっていうだけじゃ、観光客となんら変りは無い。けれど、演技をしている役者を前にカメラを回しているともなると、それはとたんに「映画の撮影現場」となる。

 そんな「ごっこ遊び」をして何が楽しいんだ?と聞かれるとグゥの音も出ないが…
でも、なんだか楽しそうって思わない?ねぇ、みなさん?


昔風の広告塔を用意する大道具さんの様子。 このアンティークな感じのポスター全てが撮影小道具。 お金かかってますね。

撮影機材を積んだトラック。何台も止まってました。

撮影前1時間くらいの風景です。
いよいよ撮影間近!の瞬間。

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