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vol.8 「華氏911」(FAHRENHEIT9/11)

極悪ジョーク・ドキュメンタリー劇場

le 17 juillet 2004

 この映画、フランスで公開されて早々に、夫に説得されて観に行くことになりました。わたしが避けたかった理由は、単に「英語&仏語字幕で観てもわからんだろう」という単純な理由からだったんだけど、内容的には「サルでもわかる滑稽ドキュメント」って感じで、映像を見てたら自然と内容がアタマに入ってくるような仕組みでした。  
 この映画については賛否両論激しくぶつかり合うだろうと思うので、映画の詳しい内容や強い私見は、書きたいけど‥‥書かないことにします。  

 さて。日本語のタイトルが何になるのかわからなかったので、テキトウに検索してみたところ、それらしきサイトを発見。なんと、「華氏911」ってタイトルなんですね。添付したオリジナル・タイトルには見てのとおり、「/」が入ってます。ナンで日本語タイトルからは消えてしまったんでしょうね。  
 そんなことはさておいて。こんなシーンもありました。
麻酔無しで頭部の大きな傷口を縫合されているイラク人の子が悲鳴を上げてるシーンとか、イラクで捉えられてしまったアメリカ兵とおぼしき死体が燃やされ、引きずり回されているシーンとか。若いアメリカ兵が戦車の中で聞いてた音楽はメmother fucker...♪モなんていう感じの曲で、それを聞きながら人を殺してたってことです。(←ゲームじゃないんだから‥‥)そんなシーンに混ざって、ブッシュの馬鹿な発言集などが面白おかしくサンドイッチ状態に挟み込まれ、喜劇・悲劇の繰り返し。  

 タランティーノが審査員で、彼がこの映画に金賞を与えたというのを聞いて、ナットク。これをコメディー映画として観たら、まさに極上の仕上がりとも言えます。でも、主演:ジョージ・W・ブッシュ って書いていいんだろうか?って疑問が‥‥。  
 そう。この映画はまさに映像のパッチワークで、ブッシュの口から発言されたことではあっても、この映画のために発言したものではない。この映画のために撮影された映像ではない。だとしたら、これはコメディー映画と言えるのか?それともやはりドキュメンタリー?一体何なんだ?  
 フランス人の友達が「ドキュメンタリーのほうで賞を取ってないのが残念」と言ってました。そこが、この映画のジャンルが何なのか、大きな疑問が生じる点じゃないかと。  

 戦争が遠く感じられる今の時代に、この映画を見て笑う観客を目にし、映画館の中でわたしは憂鬱な気分になりました。「日本の映画館でも、みんな笑うのかな?アメリカの映画館ではどうだろうか?」
 そして映画を観たすぐ後から、友達に前から進められていた大江健三郎の本を読み始めました。2冊買ったうちの1冊、「遅れてきた青春」という本。これは第二次大戦が終わったという玉音放送があった日の話から始まっている、大江氏の自伝的小説で、これを読んでいると一層この映画のことが思い出され、なんでみんな笑うんだろうか、と考えて考えて‥‥。  
 上に書いたとおり、この映画は笑えるシーンと悲劇のシーンのサンドイッチ状態なのです。ほぼ5分おきくらいに爆笑シーンがあり、その間には死の悲しいシーンが。ということで、どうにもこうにも笑わされる構造になっている映画なのです。  

 一つだけ良いと思ったのは、ワールド・トレード・センターに飛行機が突っ込んだシーンをただ真っ黒の画面にして、音だけにしたこと。あんなに何度もテレビで見たんだから、音だけでももう十分だ。そういう気分でした。  

 賛否両論大いに分かれる映画だと思うし、かなりのお騒がせ映画だけど、これをコメディーと見るなら極上のブラック・コメディーと言えるし、まさにタランティーノ好みだと思う。  
 そして、今までほとんど表に出てこなかった赤裸々なブッシュ家のことが暴露されているので、とにかくびっくりせざるをえない映画です。笑いたい人も、真面目に政治に興味がある人も、みんないっしょくたになって、ぜひぜひ映画館に足を運んでみてください。

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情報:
この映画の日本語サイト
http://www.kashi911.com/


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