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vol.4 スクリーン脇に階段

mer 16 juin 2004

 パリは、市内にある古い建物を保存する義務がある。古い建物や、古い建物の外観を残して景観を維持しようという考えは、日本でも京都なんかで盛んに行われていますね。しかしパリの場合、何百年も前の古い建物がいまだに現役で使用されているのです。

 パリの市役所やシテ島にある警察署なんて、ものすごく重々しい建物で、何も知らずに前を通ると「ここって何?」と一瞬、観光名所かと思ってしまうくらい。そんな街の映画館も、けっこう古い建物があったりする。
わたしが足を運ぶ映画館はだいたい決まっていて、あちこち渡り歩いたわけではないので、ここで話せる内容が貧弱なことを事前にお詫びしておくとして…さて、フランスの古い映画館について。

 世界で初めて映画が作られたのは今から150年ほど前でしたっけ?リュミエール兄弟っていうフランス人が最初に映画を上映しましたね。で、それ以前の「娯楽」といえば、演劇です。パリではいまだに演劇やコメディー劇が盛んですが、昔は数え切れないほどあったはずの「演劇場」が、今や映画館に変っているのです。それは、現在では演劇よりも映画の娯楽性のほうがより一般的になってきたからでしょうか。
ある日、古ぼけた小さな映画館に足を運びました。なんだか迷路みたいにぐねぐねと、しかも湾曲している通路を通って、目的の映画がある部屋へ。やたら小さいのは日本のオフシアターに似ているので特に気にならなかったけれど、それでもすごく気になったのは、小さいスクリーンの横にある階段…。階段はゆるやかな曲線を描くようにして、スクリーンの裏側に向かって延びている。なんだろうなー、この階段…と思いながらも、映画を鑑賞。そして、最後にその階段の意味がわかった。実は、そこは「出口」なのでした。

 以前に「入り口と出口は別」だとお話しましたが、ここのその階段は、まさにその出口に通じる階段だったのです。
これはわたしの推察なのですが、昔ここは劇場だったという話なので、この階段と出口は、実は役者さんたちが出入りする裏口だったのではないかと…。(あくまでわたしの推察ですよ。)

想像してみてください。小さな映画館の入り口の階段を下りていき、そこに何部屋かの小さい部屋があり、そこで短編劇やコメディーショーが行われていた時代のことを。テレビも映画も無かった時代のことを。


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